ヌアー族
/ 情報誌『デス・ウオッチング』90.5より
ヌアー族はスーダン南部のサバンナや沼沢地に住む牛牧民である。人が死ぬと家族や
親族が呼び寄せられる。そして死体は儀式をもうけず、出来るだけ早く埋葬される。墓
を掘るのは親族の男女である。墓穴は人が立って胸ぐらいの当たりの深さに掘られる。浅
いとハイエナが掘り返す恐れがあるからである。埋葬の前に死者の頭は剃られる。次に
男は裸で、女は腰皮を両足の間にはさんで牛皮の上に右を下して埋められる。そのさい
脚は折り曲げられ、両腕は頭を抱えるようにおかれる。それから死体の上にもう1度皮
をかぶせ、耳に土が入らないようにする。大体頭を西に向けて埋葬される。
土を被せるさい、人々は穴に背を向けた姿勢で穴の縁に盛り上げた土を戻していくの
である。死は邪悪なものと考えられているからである。埋葬が終わると、祭祀者は水に
稲を浸して、墓掘り人たちを清める。これを行なわないで水を飲むと死ぬと言われてい
る。2、3日後、祭祀者は遺族や近親者たちに同じように水をかけて清め、それから死
者の住居の前で神に牛を1頭捧げる。次に死んだ霊に向かい次のように言う。「この牛は
あなたのために供えました。死をつくったのは神でした。悪夢で我々を困らせないで、温
かく見守ってください。」もしこの家族が生贄の動物を飼っていない場合には、キュウリ
を半分切って供える。
服喪
死者の家族は約半年ほど喪に服するという。埋葬の後に頭を剃り、身に付けている装
身具を取り外す。服喪中は好きなダンスにも参加しない。ただし子供の死の場合には喪
に服さない。それは山羊を飼育できる歳になる迄、人間とは見做されないからだ。
喪明けの儀式
およそ半年後に行なわれる喪明けの儀式は、死者を慰撫するために行なわれる。この
時にも動物が生贄に捧げられる。もし牛が手に入らなかったら山羊や羊が代用される。動
物が捧げられた後、皮を剥がれ、参加者に肉が分配される。
次に祭祀者は、東と西に向けてタバコを投げ、追悼の言葉を語る。始めに神に向かい
「あなたは彼(死者)を召されました。彼はあなたの国の一員になりました。ただちに彼
をお連れください。そして残された我々には平安をお与え下さい」と言う。
次に死者の霊に呼びかける。「あなたは今や神の国の住民になった。我々を忘れず我々
に平安をお与え下さい」と語る。このあと、親族の男たちが同じような内容のことを順
次語り、こうして何時間もこの弔辞が続けられるのである。
永い弔辞が終わると祭祀者は、死者の持ち物を分配する。祭祀者は牛の皮を半分もら
う権利がある。儀式がどどこおりなく終わると、人々は体を清め、故人の所持品も水で
清められる。
喪の儀式は参加者全員が頭を剃ることで終了する。髪を切ることで、死者を生者から
切り離すことが象徴されるからである。
人は死んで何処かに行くと考えられているが、そこがどこであるのか彼らはよく知ら
ない。どこにありどうなっているのかを知ることは出来ないと思っているのである。
(資料: E・プリチャード著『ヌアー族の宗教』岩波書店)編集後記
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