韓国
/ 情報誌『デス・ウオッチング』88.7より
死後の霊魂は生前と同じ人格
韓国で古代から伝わる巫俗は、仏教、儒教、キリスト教等、外来の宗教が伝来した後
もその影響を受けながら、現在でも庶民のなかで、根強い宗教的基盤として生き続けて
いる。
巫俗の霊魂観においては、死後の霊魂は生きている人間と同一の人格、同一の姿をし
ているという。ただその姿は夢、幻想のなかでしか見ることができない。意思、言葉の
疎通もそのなかでのみ行なわれる。現世で裕福になんら悩みもなく長寿を全うして死ん
だ人は、善霊となる。彼らは祖先神、巫祖神として人間を守護してくれる。ただ非礼な
扱いを受けると、人間に注意を促すために、苦痛、不幸を与えるという。即ち、祖先が
「怒った」「触れた」といわれる。逆に現世で不満足な人生を送って死んだ人の霊魂、特
に夭折、横死した霊魂は、生前の現世に対する怨根から悪霊となる。彼らはこの世をさ
迷い、人間に病気で苦しめたり、様々な災いをもたらすのである。
善も悪もない世界
人は死ぬと長い旅路に出る。冥府に行き、十大王の前を次々に通り、生前の善悪の行
ないの裁判を受け、善人は西方極楽浄上に送られて往生する。悪人は地獄に連れられて
いき、あらゆる刑罰を永遠に受ける。だが、これは仏教の影響を受けた後の「あの世」観
である。それ以前には、おそらく誰もが善悪未分化の「あの世」に行き、そこで生前の
縁を清算して新しい生活を始めたのであった。動物は善悪以前の世界に生きている。古
代人は素朴な信仰のなかに生きていたので、善悪や教義に頬わされることなく、自然に
死んであの世にも自然に生きることができたのである。極楽、地獄が峻別されたのは、社
会が複雑になり、外来の宗教が導入されて、善悪の観念がやかましくなってからのこと
である。
死方の魂を招く儀礼
死後、霊魂をあの世に無事送り届ける儀礼として、死の直後に行なう「家払い」、死後3カ月、6カ月に行う「みこ祭」がある。「家払い」は不浄払いから始まり、次に巫が鈴
を振りながら、巫歌を唱え、死者の魂を招魂する。死者の魂は招かれ、巫に降り、生前
の怨恨、遺言を語り、遺族と最後の別れを行なう。そしてあの世からの使者に死者を引
渡すのである。「みこ祭」では巫は鈴と長鼓を鳴らしながら「バリ公主」の巫歌を唱え、
それから庭に出て、「ドリオン廻り」を行なう。巫歌に合せて3歩前進、2歩後退のゆっ
くりした足取りで廻る。こうして死者の他界への旅路を演じるのである。それから死者
の「あの世」への道を開く「十王布」を開く儀式を行なうのである。(吉野)
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