コタ族

/ 情報誌『デス・ウオッチング』89.10より


 

   葬儀を2度行なうコタ族


 コタ族は南インドのニルゲリ高原に住む民族である。彼らは2度葬儀を行なうことで 知られている。最初の葬儀は「緑の葬儀」と呼ばれる。死の直後に遺体は火葬にされる。 1回目の葬儀の際、若干の頭蓋骨が火葬のすんだ積み薪の中から取り出され、第2の葬 儀の時まで大事に保存される。第2の葬儀は「乾いた葬儀」と呼ばれ、その年に死んだ 死者の遺骨が1つ1つ火葬場に集められて、複雑な儀式を行なった後に再び火葬にされ る。この第2の葬儀は12日間に渡って続けられる。
 2度の葬儀が行なわれる理由は、宗教的な理由と社会的な理由がある。宗教的理由と しては、人が死んで第2の葬儀が終了するまでの間、さまよえる魂は人々にとって危険 なものとされる。2度目の葬儀が終わるまで、死者の魂はコタ族の死後世界である「母 なる国」に行くことができないからである。社会的理由では、未亡人は依然として死ん だ夫の妻であり、2度目の葬儀以前に妻が妊娠すると、その子供は亡き夫の子供として 財産を継ぐという。
 第2の葬儀は、村民や弔問者が一連の儀式における役割を担って参加する。役割は死 者の親族と共同体の一員と2つに大きく分けられる。親族は浄化され社会に復帰しよう としている遺族であり、部落の一員や他のコタ族の縁者たちは、遺族の再起を援助し魂 の痛みを支えるのである。
 

   第2の葬儀の4つの段階


 第2の葬儀は11日間続く。第1日目の朝、楽団が集まり哀悼歌を奏でる。葬送の調べ が流れると、遺族の人たちはその日1日泣き叫んで過ごす。儀式は四つの段階に分れる。
 第1に前年度の死者を1人1人記憶していく週が持たれる。この週の間、遺族は厳格な タブーを守っている。ずっとボロ着を身に付け、髪を解かさず、低い声で話し、家中が 悲しみにつつまれて1つ屋根で過ごす。他の村人は連夜踊り続ける。
 次の段階は2度目の火葬である。人々の行列が村の外れまでねり歩き、火葬の積み薪 の上に置く副葬品を運んでいく。遺骨が取り出され火葬場まで運ばれる、遺品とともに 置かれ点火される。
 第3段階は火葬場で夜を明かした人々が、明けの明星を見つけたときに始まる。雰囲 気が突然変わり、踊りと宴会が始まる。その夜、未亡人や男やもめは、死亡した配偶者 の同胞を特別に選んで性的な関係を持つ。これは正常な社会生活に復帰する第1歩を象徴 するものである。
 最後の2日間は歌ったり踊ったりして過ごす。村民は皆儀礼的に浄化される。弔問者 は帰っていき、村民たちも再び日常生活に戻る。
 未亡人にとっても、他の遺族にとっても2度目の葬儀を行なうことで、悲しみを効果 的に和らげ、あらたな個人的目標を得ることになる。最初の葬儀の時には、激しい悲し みがあったが、その後比較的平静な数か月を過ごす。
 2度目の葬儀は人々の潜在的な悲しみを呼び起こし、表面化させて最終的に悲しみを 尽きさせる働きをしている。11日間の葬儀は悲しみを吐き出すのに十分な期間といえよ う。その悲しみは儀式の終わりには弱まり、最後には消えて、遺族を社会復帰させるの である。
          (資料=マンデルバウム「葬儀の社会的効用」)



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