モンゴル
/ 情報誌『デス・ウオッチング』90.11より
モンゴル人は、シャーマニズムと混合したラマ教を信仰している。死が近づいてくる
と、僧侶(ラマ)はテントの中から外に連れ出すように命じ、裸にする。これは「モン
ゴル人はテントの中で生まれ、平原で死ぬ」という伝統を受け継ぐことと、もう1つの
理由からである。それは死は汚れであり、死者を家の中に置くことは、生者に相応しく
ないからである。また死者の魂が、馴染んだ世界にあると、生者に害をなすかも知れな
いからである。しかし遺体を出す場合、決して普通の入り口から出すことはない。藁で
入り口を覆うか、新たに扉を作りそこから遺体を運びだすのである。遺体を出した後に
は、藁のドアは燃してしまう。
死者の魂の出発
裕福な家では、死者の魂が肉体から抜け出る手助けをラマが行なう。彼は死者の髪の
毛を抜いて魂の出口を開け、そこから魂が肉体を抜け出し天に帰ってて行くことを瞑想
する。その間、彼の助手はお経を読み、シンバルと鈴を鳴らし、トランペットを吹く。ラ
マは死者の魂が抜け出たことを見計らってから、次に遺体を座らせ、頭に青のスカーフ
を着け顔を覆う。また遺族の者たちは死者の旅立ちの用意に、スカーフ、お茶、バター、
小麦粉などを持ち寄る。
三種の遺体処置法
遺体の処置は死後2、3日してから行なわれる。その方法は、土葬、火葬、鳥葬がある
が、そのいずれかをラマが決定する。
土葬を行なう場合には、前もって大地の神をなだめる儀礼を行なう。このためラマは
白の杖、新しい敷物、黒羊の皮を用意する。現場につくと彼は杖で大地に円を描き、輪
の中に敷物を投げ、次に羊の皮を広げる。そしてお経を唱えた後、穴を掘るのである。こ
うして式を終えたラマは、儀式に使用した敷物と皮をお礼に頂く。
火葬の場合にも同じように、火葬する土地の神をなだめる儀式を行なう。そして遺族
たちが薪の上に遺体を置いた後、周りに石の壁を築き、底の方に火をつけるための穴を
設ける。火を付ける前に、死者の額にさじ一杯分のバターを塗り、そしてそこに柳の葉
を72回置くのである。火を付けるのは死者と同年配の者が選ばれ、火が付けられる。金
持ちの中には火葬した後に仏塔を立てたり、火葬した灰を寺院に収納するケースもある。
遺体の放置
遺体の放置は、もっとも単純で一般的な方法である。遺体を裸にし、砂の上に置く。こ
の場合にもラマは重要な役割を果たす。遺体の放置の方法に2通りの方法があり、遺体
を捨てて動物に食べさせるものと、遺体から骨を取りはずし鳥に食べさせる方法である。
遺体を動物に食べさせる習慣は残酷のよう思われるが、モンゴル人にとって「遺体が動
物に食べられる」ことは吉兆なのである。また中央アジアの中国人は「鷹は遊牧民の柩
である」といって、鳥葬の普及振りを物語っている。
喪の習慣
喪の期間は49日でその間、未亡人と子供は髪を切ることが出来ない。そして期間中、
青の喪服を着るのである。モンゴル人は普段挨拶する人でも、喪の期間は頭を下げるだ
けで口をきくことはない。
(ラマーズ『世界の葬儀風俗』より)
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