フィリピン
/ 情報誌『デス・ウオッチング』91.3より
今回はフィリピンの二つの部族の死後世界を見てみます。
(1)マノボー族
フイリピン南端部のミンダナオ島西部に住むマノボー族は、葬儀の宴会を最も大切に
する。それはこの祭りがすまない間は、死者の魂が遺族たちに害を与えるからである。そ
こで近親者たちは、宴会に必要な豚・米・飲み物を急いで用意する。こうして御馳走が
準備できると、食べ物を並べた床の上に、籾殻を吹き分ける道具を置き、身内の人々は
この道具の回りに座って、一人づつお盆にビンロウの実を乗せ死者に供える。そして死
者を自分との続き柄で呼び、有益な助言を与える。「私たちを悩ますことなく、あなたの
行くべき所に行きなさい。そして死者の国(イブー)で再び合うまで、別れのしるしと
して受け取って下さい」という。最後に身内の中の長老が一握りの御飯で人形を作り、死
者に向かって一緒に食べるように招く。身内の人々はその人形の御飯を軽く食べた後、次
の人に回す。その間、皆は死者に対しどんどん食べるように勧めるのである。
死後の世界
マノボー族は死者の魂がイブーに行くと信じている。イブーは地下にあって、山や河
などこの世界にあるものが備わっている。この世とイブーの中間には赤い河が流れ、死
者がここに至るまで七日間かかる。この河の渡し守は親切で渡し賃を要求しないが、も
し河を渡るのを拒む事情がある場合は、死者の魂をその出発点に戻し、死者の友人にそ
の魂を助けるよう頼む役も引受るのである。さて河を越してからさらにイブーまでに至
るに同じく7日間かかる。死者の国は天国でも地獄でもなく、現世の延長で、ただ現世の
煩わしさがないとされているから天国に近いのかも知れない。そしてそこで以前に亡く
なった縁者と一緒に生活し、仕事をし、結婚もする。そして時には自分が住んでいた家
を訪問したりして暮らすのである。
(2)スーロッド族
フイリッピン中央部のパナイ島の山岳民族であるスーロッドでは、大部分の死は霊や
呪いによって起こると信じている。人が死ぬと遺体に印が着けられ、家の中の壇に安置
される。そしてもみがらとココナツの皮を混ぜた香を焚き、悪霊が死体を食うのを妨げ
る。遺体は生姜を擦り込み、死後3日目に行なわれる埋葬まで、腐敗しないようにする。
通夜がすむと死者に立派な衣装を着ける。魂はあの世でも生活を楽しみ、よい衣装を着
て向こうで恥ずかしい思いをしないようにするのである。
スーロッドにとって死とは狭いトンネルを潜り抜けることで、これを越えるともうこ
の世界には戻れない。この入口からあの世の里の間に蟻塚があり、魂はこの塚の回りを
歩いて川岸にやって来る。この岸には悪霊が住んでいるため、縁者は死者を送り出す前
に、この悪霊の機嫌をとってお供えをする。死者は河で葬式に着た服を脱ぎ、河で水浴
をすませた後、新しい着物に着替える。そして魂の番人のいる湖に向かう。ここで魂は
いくつかの質問を受けた後、舟に乗って向こう岸に渡る。そしてもう一つの河に至り、こ
こでもまた質問を受ける。そして無事この河を渡りきると、先に死んだ親類縁者たちが
待っている里に到着する。
この里に着くとまず最初に闘鶏場に出かけ、そこで賭けごとをして楽しむ。その後休
憩所に入り、現世から霊を強める儀式と番人への供えものの儀式がすむまでそこにとど
め置かれる。もし地上でこの儀式を行なわない場合、死者の魂はコウロギなどに変えら
れて地上に戻されることになる。儀式が無事行なわれた魂は、里の中心に行き幸せな生
活を送るのである。(資料 本山博監修『世界の諸宗教における死後の世界』宗教心理出
版)
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