トラジャ族

/ 情報誌『デス・ウオッチング』88.9より


 

   世界から葬儀を見にやってくる


 トラジャ族はインドネシアのセレベス島の南部の山地に住む耕作民である。現在では 日本との合弁のコーヒー園ができ、トラジャーコーヒーとして有名である。その伝統的 宗教「アルック・ト・ドロ(祖先のやり方)」による、特異な葬送儀礼は、インドネシア の重要な観光資源として保護され、毎年多くの観光客が世界中から訪れている。
 トラジャ族はもとは首狩り族であったが、西洋人が布教に来て以来、キリスト教に改 宗している者も多い。それでも伝統的な葬送習慣はよく尊守されている。
 

   水牛の犠牲は富の象徴


 トラジャ族は「死ぬために生きている」といわれている。トラジャの社会と分化は、こ の死者儀礼を中心に回転しているからである。トラジャ族は王侯、責族、平民、奴隷か らなる身分社会である。葬儀は主権者の身分・富・威信・寛大さを誇示するために、経 済の許すかぎり盛大に行なわれる。トラジャでは水牛が富の尺度でありその水牛を何頭 犠牲にしたかによって葬儀のランクがはかられる。その最高ランクの祭宴では、数十頭 の水牛が儀牲にされ、数年間かけて行なわれる。これは住居の周辺で行なわれる第一次 祭宴と、祭宴広場で行なわれるランデという第二次祭宴に分かれる。
 第一次祭宴は死後数カ月、あるいは数年してから行なわれる。まず「息を引き取る」儀 礼から始まる。これによって死者は正式に死んだと見なされ、南枕で横たえられる。次 に通夜が行なわれ、さらに水牛の犠牲が行なわれる。多数の水牛が犠牲にされ、村人に 分配される。それから死者は棺に入れられ、第二次祭宴まで休むのである。
 

   弔問客は長い列をつくる


 数か月後、第二次祭宴が村人総出で大規模に行なわれる。家と同じ船型の屋根をした 遺体運搬台が作られ、それに遺体を乗せ広場まで運ぶ。その行列には親族や司祭が付き 従う。広場では夜を徹して葬歌、ダンスがくりひろげられる。また「弔問客来訪日」に はグループごとに、水牛や豚というお供えをもって広場に訪れる。黒衣をまとい、竹笠 をかぶった何千人という長い弔問客の列が続くこともある。弔問客が揃ったところで、何 日にもわたって何十頭もの水牛、豚の儀牲、分配が行なわれる。また広場では闘鶏が行 なわれ、会場に集まった人々を熱狂させる。最後に遺体が岩山の岸壁に掘られた墓に運 ばれ、副葬品の人形とともに納められる。ここで死体は風葬にされ、死者は死者の国に 行くのである。さらに数年後には「死者をひっくり返す」儀礼が行なわれる。これによっ て死者は神格化され、祖先となって天に登り、子孫に繁栄をもたらすものとなるのであ る。(吉野)



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