ウィールマン族

/ 情報誌『デス・ウオッチング』91.11より


 
 18世紀末期に、囚人の島として出発したオーストラリアも、19世紀の初頭から移民者 が入り、原住民の支配する土地ではなくなった。ヨーロッパ人が来島当時には、15万人 を数えた原住民の数も一時は5万人ほどに減少したが、1981年には25万人に増大してい る。このうち3割が純血で7割が混血である。5〜600を数えていた部族のうち、今回は 西南オーストリアのウィールマン族を見てみる。
 

   死から埋葬まで


 ウィールマン族の医師兼僧侶の役割を担う呪医が死亡した時の記録によると、彼は病 気になると野犬のように吠た。死は悪霊によって起こると信じられており、人々は石で 野犬を追い払う儀式を行なうが治らない。やがて死が訪れると、女たちは盛んに泣き声 を上げ始める。この仕草は妻たちによって行なわれ、悪霊に許しをこうのである。翌朝 には全部の夫人がこれに参加した。その声はとても悲しみに満ちている。やがて夫人は 老人や老婦人に守られ、他の者たちは墓堀に出かける。
 彼らは墓を掘ったあと昼頃帰って来ると、死体を小屋から出し、運搬用の台に乗せた。 そして1.6キロほどある墓場まで運び、女子供は泣きながらそれに従った。墓には小屋が 立てられ、その前に半月形の墓穴が掘られ、底には小枝が敷かれている。棺台を墓近く に降ろすと、1人の男が棒を持って死体に近づき、死者の腕、脚、大腿の骨を折りまげる。 死者の骨を折るのは、悪霊が死者の身体に入って動きだすのを禁じるためである。そし て膝をあごに引き寄せ、右側を下にし顔を朝日の昇る方に向けて寝かせながら墓穴に入 れ、そのあと木の葉を遺体の上に掛け、さらに土で覆った。
 

   独特の埋葬儀礼


 これがすむと泣いていた女たちは、火を墓の近くと少し離れた所に焚いた。次に死者 の骨を砕いた男は、槍を膝で折って、墓の死者の足元の方に置き、ブーメラン、斧、ナ イフもその近くに置いた。次に呪術に用いる石を入れた袋を足の近くに吊るし、肉と水 をそれぞれ2つの火の傍に供えた。このあと4人の男は墓に背を向けて座ると、1人の女 性が2つの火もとから火のついた木を取り、火を消してから一列に並べた。4人の男が大 声を上げると、続いてこの女性も声を上げる。次に骨を砕いた男が2本の燃え木を取り、 火のついている方を地面にさし「もういない」という。これは悪霊はいないということ を意味する。次に墓の近くの木に斧で印をつけて儀式を終わる。この印は死者の性別や 年令を区別するためのものである。このあと女たちは泣きながら逃げて帰り、男もその 後に従う。
 夕刻には小屋は焼かれ、4週間の間、遺族は夕方になると墓に行き、2本の火のうちの 1本は前の場所から墓から徐々に離れる位置に立てる。この2つの火は1つは死者のため、 もう1つは悪霊のためである。2番目の火にも肉を供えるのは、悪霊が死者の食べ者を盗 まないためである。火を墓から次第に遠ざけるのは悪霊を遠くに誘い、死者が目覚めた ときに、逃れる機会を与えるためである。
 山地部族と平原部族とでは墓の向きは異なり、前者は南北に掘り、死体を右側位にし、 頭を南に顔を東に向ける。平原部族では、墓を東西に掘り、頭を東に顔は太陽が沈む西 に向ける。
 

   死後の世界


 死者は死んでから、太陽に行くと信じられている。彼らにとって太陽は熱くなく、熱 は太陽と大地の間の空気の持つ性質であるという。男が死んだ場合には他の部族の女を、 女の場合は男を襲い、死者の供養とする。呪医が死んだとき、老たる妻に「あなたが死 んだときに、遠いあの世で彼と合うことでしょう」と慰めると彼女は、「そこは遠く。大 変に広い国だから、とても探せそうにありません」と答えた。   (資料、棚瀬襄爾『他 界観念の原始形態』)



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