ベニス
/ 情報誌『デス・ウオッチング』90.10より
水の都ベニスはイタリアの北東部にある、人口36万の都市である。この都市の交通機
関はゴンドラで、従って葬列もゴンドラに乗って行なわれる。そしてゴンドラに運ばれ
た棺の行き先は、サン・ミケーレ教会のあるサン・ミケーレ島である。ここまでは水上
バスで5分で到着する。イタリアはカトリックの国であるため、南部ではほとんど火葬が
行なわれておらず、ベニスでもまたしかりである。従ってこの島が唯一の埋葬地となっ
ている。この教会は1467年に建てられたものであるが、そこが埋葬地になったのは19世
紀始め、ナポレオンの指示によって行なわれた。そして現在の全体を壁に囲まれた長方
形の形になったのは19世紀半ばである。しかしこのサン・ミケーレ島にも、1887年以来、
ベニス火葬協会が設立されているのである。
ペストの中継地
東方の貿易の中継地であったベニスは、西暦900年から1500年のおよそ600年間に、63
回のペストが侵入した。1348年の黒死病の時には、死者10万人、人口の5割が死亡した。
そして感染した患者を島に隔離する方法は、15世紀から始まった。
埋葬の島
棺と神父を乗せたゴンドラ、遺族を乗せたゴンドラ、そして供花を乗せたゴンドラが
島につくと、別のボートに乗ってきた友人たちが、棺を担ぐために岸に上がる。同じく
水上タクシーや、個人のボートに乗った会葬者たちも岸に上がる。霊園のある教会のゲー
トは、色取りどりの花に飾られている。黒の腕章をした船頭から、棺が11人の担い手に
手渡され、船頭に従って棺を担いで中に入って行く。両側に樹木のある小道を進んで埋
葬地へと向かう。この霊園は永代管理する高価な霊廟と、12年間だけ埋葬される場所に
大きく分けられる。そして大概の庶民はこの一時的な土地に埋葬されるのである。
埋葬の地に来てまず驚かされるのは、敷地の半数が新しい墓によって占領されている
ことである。埋葬される土地が塹壕のようにトラクターで掘り返されていて、最近埋葬
された棺のすぐ隣に埋葬され、その上に名前の記した十字架を立てるのである。4人の作
業員によって、棺がロープとともに棺のすぐ隣に降ろされる。会葬者の見守る中、素早
く土がかけられて、神父によるお祈りが始まる。
埋葬する地域が限られているため、12年立った墓は掘り返されて、そこに新しい棺を
埋めていくのである。こうして墓から掘り返された、古い壷や高価な記念品や十字架は、
墓地の一角に集められ、サッカ諸島の古い建物の石垣に用いられる。そして人の遺骸は
他の島に納骨堂などに儀礼を行なうことなく、埋葬し直されのである。
(資料:「アメリカン・フユネラル・デレクター」89年10月号)
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