明恵上人

/ 情報誌『デス・ウオッチング』94.4より


 
 鎌倉時代の華厳宗の僧、明恵は長い「夢日記」を書き残し、心理学者が取り上げて評 判となったが、しかし彼の功績は光明真言を唱えて、死者がその苦しみから逃れ、菩提 を得ることを人々に薦めたことであろう。明恵上人の書いた『光明真言土砂勧信記』に よると、土砂の効果を次のように説いている。「真言を唱えた砂を遺体、墓の上に散らし たならば、たとえその死者が一生の間、罪を作り少しの善根も行わず、地獄に落ちた場 合であっても、この砂はたちまち真言の光を放って、罪苦しみのあるところに及び、そ の罪がおのずから消えていき極楽世界に往生するのである」
明恵は坐禅に多くの時間を費やしたが、58歳頃から病気がちとなり、1232年1月19 日、栂尾の禅堂院で歿した(60歳)。葬儀は遺言に従って、彼が薦めた光明真言を取り入 れた形で行われた。そして7日ごとに仏事が営まれ、百カ日には宝塔が建てられた。

 葬儀

 葬儀は死後3日後の1月21日に行われた。まず7尺の棺が運びこまれ、入棺の儀が行 われた。遺体を棺に納めたあと、遺体に次の順序で香水がかけられ、呪文とともに加持 が行われた。初めに左右の足、次に左右の脇、背中、頭、顔の順であった。
 次に入棺の言葉を唱える。
「まさに恩を受けた霊魂よ、棺の中にお乗り下さいますようお願い申しあげます。十地の 菩薩があなたのまわりを取り巻き、みろく菩薩がまします都率天の中にあなたを引き寄 せ、本当に如来の素晴らしい悟りの境地にあることを証すことでしょう。
次に仏法僧に帰依することを三度誓い(三帰)
カルマのもつ障りを取り除き、悪趣を滅し、地獄を打ち破る呪文を唱える。
次に棺の底に土砂をかけて呪文が唱えられる。
次にムシロを棺の中にいれ、再び土砂が振りかけられる。
次に遺体の上に衣が被せられる。
次に具足が棺の中に入れられ、最後に蓋で棺を覆い、布によって棺を縛る。そして黄色 い幡が立てられる。

 葬列

 枕元に火をともし、松の本を前にさし出す。
まず2人の先導者は香をたいて、輪を鳴らして進む。そのあと葬列に従う人々は、それぞ れ「光明真言」を唱えながら進む。棺は埋葬所に運ばれ、穴の側に置かれる。
 あらかじめ掘られてあった穴の底に土砂をパラパラとかけ、棺を墓穴に下ろす。棺の 上に土がかぶせられている間、『理趣経』が読まれる。
 棺を埋葬し終えると、土の上に五輪を形取った卒塔婆が立てられた。
 こうして墓地での儀式は終わりである。

 葬家での仏事

 続いて葬家に帰り、それぞれ僧侶は日常行っている経典や供養に欠かせない法要を務め た。そして地獄を破る真言を唱えた。

 道具

 次にあげるものは、葬儀に必要な道具である。
    灑水(一器)
    脇机
    土砂(一袋)
    火舎(一口)と香をそれぞれ一袋
    五輪板率塔婆(一)
    衣、袈裟、念数
    松明少々
    棺閉じ布六丈
    棺覆(黄幡)
    墓穴を掘る鋤(すき)、鍬(くわ)など。



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