明恵上人
葬儀
葬儀は死後3日後の1月21日に行われた。まず7尺の棺が運びこまれ、入棺の儀が行
われた。遺体を棺に納めたあと、遺体に次の順序で香水がかけられ、呪文とともに加持
が行われた。初めに左右の足、次に左右の脇、背中、頭、顔の順であった。
次に入棺の言葉を唱える。
「まさに恩を受けた霊魂よ、棺の中にお乗り下さいますようお願い申しあげます。十地の
菩薩があなたのまわりを取り巻き、みろく菩薩がまします都率天の中にあなたを引き寄
せ、本当に如来の素晴らしい悟りの境地にあることを証すことでしょう。
次に仏法僧に帰依することを三度誓い(三帰)
カルマのもつ障りを取り除き、悪趣を滅し、地獄を打ち破る呪文を唱える。
次に棺の底に土砂をかけて呪文が唱えられる。
次にムシロを棺の中にいれ、再び土砂が振りかけられる。
次に遺体の上に衣が被せられる。
次に具足が棺の中に入れられ、最後に蓋で棺を覆い、布によって棺を縛る。そして黄色
い幡が立てられる。
葬列
枕元に火をともし、松の本を前にさし出す。
まず2人の先導者は香をたいて、輪を鳴らして進む。そのあと葬列に従う人々は、それぞ
れ「光明真言」を唱えながら進む。棺は埋葬所に運ばれ、穴の側に置かれる。
あらかじめ掘られてあった穴の底に土砂をパラパラとかけ、棺を墓穴に下ろす。棺の
上に土がかぶせられている間、『理趣経』が読まれる。
棺を埋葬し終えると、土の上に五輪を形取った卒塔婆が立てられた。
こうして墓地での儀式は終わりである。
葬家での仏事
続いて葬家に帰り、それぞれ僧侶は日常行っている経典や供養に欠かせない法要を務め た。そして地獄を破る真言を唱えた。
道具
次にあげるものは、葬儀に必要な道具である。
灑水(一器)
脇机
土砂(一袋)
火舎(一口)と香をそれぞれ一袋
五輪板率塔婆(一)
衣、袈裟、念数
松明少々
棺閉じ布六丈
棺覆(黄幡)
墓穴を掘る鋤(すき)、鍬(くわ)など。