欧米の事前設計事情
アメリカでは葬儀の事前予約、つまりプレニード葬儀が大変に普及してきている。 『フュネラル・サービス誌』94年5月号では、アメリカの葬儀の15%は、事前支払で行わ れているという。またフランスでは50%(高すぎるので現在問い合わせ中)、イギリスで はまだ1%にもみたない状態であるが、年間50%ほどの伸びを見せている。プレニード葬 儀は、本人もしくは家族が前もって代理店を通じて事前葬儀を販売する特定の保険会社 へ葬儀料金を支払い、葬儀内容についてあらかじめ契約を結ぶことである。このプレニー ド葬儀が、アメリカの葬儀の流れを大きく変えたのは言うまでもない。ではその現状に ついて簡単にみることにしよう。
『アメリカン・フュネラル・デレクター』92年9月号に、アメリカのプレニードの進展 について述べている。それによると、1960年には国内で2万2000件の契約数であったが、 66年には2倍の4万4000件、86年には6万件、そして4年後の90年には一気に120万件 が販売された。1960年から1990年までの累計では900万人が契約したことになる。
予測によると1993年から西暦2000年までには、2800万人が加入するという。その結 果、プレニード保険の保有額は100億ドルを超過するという。また同誌94年6月号によ ると、1993年のアメリカでの年間死亡者数は、220万人以上で、西暦2000年までには、 国内の葬儀の40%が事前葬儀の費用で賄われると予測している。
このプレニードサービス市場は、葬儀はもとより、霊園、火葬料金まで拡大されてい きつつあるが、それが成功した背景には、全国の葬儀の価格体系やサービス体系が標準 化されていたことが上げられる。
アメリカのプレニード保険会社
『アメリカン・フュネラル・デレクター』1991年4月号に、プレニードを扱う会社のオー ナーならびにスタッフがその内容についてのべている。その概要を紹介したい。
●事前葬儀プラン研究所 (インディアナ州)
1990年代の葬儀サービスの一つが、葬儀プランといえる。葬儀プランは葬儀社の評判 と専門家意識を高め、地域での役割を増大させる役割をもつ。
また事前葬儀プランを成功させるためには、消費者に気をくばることが必要である。す べての家族が、事前か必要時かを問わず、葬儀プランの選択の権利を与えられるかどう かが問題である。事前加入をしなければ必要な時点(死)になって葬儀を手配しなけれ ばならなくなるのである。
事前葬儀を成功させる秘訣は「葬儀プランは、サービスの延長」であることを顧客に 認知させることである。
事前葬儀プランを理解させるための組織が「事前葬儀プラン研究所」である。この研 究所では現在、9つのコースを扱い、これらのコースは、事前葬儀プランに関わる葬儀 デレクターの世話をしたり、カウンセラーとプログラムマネージャーのためのコースも ある。また齋場スタッフのためのコースもある。長期の成功の鍵は知識と教育にある。
●フォアソウトグループ会社 (インディアナ州)
葬儀デレクターは、柔軟性のある葬儀プラン商品を望んでいる。この社ではそれを参 考にして新商品を開発した。それには所得税がかからない。棺の購入が出来、価格が保 証されている。インフレ保護もある。多くの支払い方法が可能である。譲渡も可能。ま たフォアソウト生命保険会社の安定性に、フォアソウト葬儀プランの信託という長所が 加えられる。
それは認定資産で少なくとも3億5000万ドルがあり、生命保険保護のために6億ドル 以上が供給された。
「フォアソウト」葬儀プラン専門家のネットワークは、5年間に35州、コロンビア地区 とプエルト・リコで5200メンバーに届くまで成長した。人々は死の時点に家族を守る単 純で、安全で、そして安心なプランを望んでいる。決定するにあたって、いくつかの商 品の特徴を比較し、最もよいものを選択する。
●レガシーワン社 (西ヴァージニア州)
プレニードは今日葬儀サービスのなかで最も成長し、変化している部門である。保険 管理職は、葬儀サービスと事前プランのため、かってない教育を受け、保険基金商品の 獲得のために定期的な補習が行なわれている。葬儀デレクターと消費者は保険の理解を 深め、また保険業界ではより単純で安全な商品を開発している。
プレニードプログラムが失敗する理由は、齋場がプレニードが果たす目標の確立と実 施の責任を怠ることにある。
プレニードプログラムを選択するときに最も重要なことは、その商品の成長である。現 在の統計では、およそ17年ごとに葬儀代金が2倍になっている。そのため、契約を果た すための十分な資金を保証するために、積立合算で最低5%の伸びが必要である。それな らば十分な代金を受け取れる。今日4000ドルで葬儀を施行したなら、明日4000ドル支払 われる必要があるからである。
十分な成長が見込めない商品は、どれも危険な商品である。そしてそのような商品が 使われたとき、齋場ビジネスの将来は危険となる。齋場に必要な成長率を簡単にテスト するには、過去の10〜20年間に行なった葬儀費用を検討することである。自社の齋場の 記録を使えば、葬儀デレクターが諸設備のインフレの影響を確認できる。そしてどれだ けの増設が必要で、齋場の将来を適切に守るためにどんな方法があるかを示唆するだろ う。
他の商品選考基準に、消費者保護がある。プランの種類に、高年齢で不健康な個人を 保証する商品がある。これらの個人は生存期間が短いので、高い支払率がかせられてい る。これらの大多数が、支払い期間より長生きした場合、問題が発生する。たとえば、健 康を害した65歳の個人が、3千ドルの葬儀を選択して、月90ドルの積立契約で、10年月々 払う契約をした。10年目の終わりにこの人は、1万ドル支払った。葬儀代金は4500ドル に値上がりし、死亡時の給付金は4500ドルとなる。家族にはその葬儀代が支払われるが、 契約者は6300ドルも余分に支払ったことになる。
「レガシープラン」商品は五%の率で、死亡時か100歳までの期間、利子が加算される。 加えて、死亡給付金は額面金額に成長分か、すべての払込分の返済かのどちらか大いほ うを選択できる。
事前葬儀プランのパンフレットを見ると、消費者はすごく混乱してしまう。消費者に とって不幸なのはパンフレットを見て、プレニードプラン選んだ時である。今日の消費 者は、齋場側のニーズだけでなく、消費者のニーズに最も適したプランを提供してくれ ることを期待している。
もし保険免許のある葬儀デレクターがこの決定ができないならば、購入者はどのよう にその難しい決定をすることが期待できよう。
プレニードの提案は、常に齋場設備の案内から始めるべきである。これは葬儀デレク ターが、その施設や従業員を紹介し、そして追加すべき商品を納得していただきながら 予算を見積るのである。もし購入者が、施設を見、従業員に合い、商品を実際に選んだ なら、顧客は、キャンセルしたり、事前葬儀予約を他の齋場に変更することはないであ ろう。
プレニード販売には3つの側面がある:販売促進面、内容紹介面、そして作業見積面 である。販売促進面では、「レガシーワン」は、このプランの促進のために、新聞、ラジ オ、そして必要な他のメディアの動員を行った。内容紹介面のためには、事前計画のメ リットを紹介する九分間ビデオだけでなく、興味をそそる資料を用意している。
●ホームステドラー生命会社 (アイオワ州)
多くの要因が、市場のプレニード保険商品に影響を与え、さらに2、3年の間に、いっ そう激しい影響が現われてくる。多くの保険商品は、プレニードプログラムの基金とな り、比較的新しい組み合わせで、市場に出てきている。会社が新たな商品を開発すると き、契約は死亡率、掛け金、寿命に対して行なわれる。
葬儀サービスを実施するには、顧客は常に高レベルのサービスを期待していることを 認識していなければならない。このメッセージを掴み、それを実施する所はプレニード ビジネスでの長期の働き手になるだろう。
イギリスのプレニードについて
イギリスは、アメリカの影響を受けてプレニード商品が入ってきた。販売会社には、次 に紹介する「チョーゼン・ヘリテージ」、「ディグニティー社」「コープ葬儀ボンド」など がある。
マッケボイ氏は『フュネラルサービス誌』で、事前支払い葬儀プランについて述べている。それによると、事前支払葬儀プランの基本条件に4つの特徴があるといっている。
また、この仕組みを成り立たせるためには次の3つが必要である。
企業は、前以て支払いを受け、顧客が要求した時点で葬儀を実行するが、追徴金を取 らないことを約束している。この作業見積は契約に基づき、会社は将来、明記されたサー ビスを提供するものである。トラブルはこの作業見積書から発生する。
会社が支払いが出来なくなれば、顧客は債権者となり、葬儀も金も得られなくなる。会 社は、将来のサービス提供に対する金銭を受け取り、その利益は、その年の利益部分と される。そこで、利益高から税を払い、サービスを提供する時点の価格上昇のために利 益蓄積を行なう。
どんな商品も、計画が『利益配当』ができる型式によって維持されなければ、将来の 葬儀サービスが、業者や個人の利益を抑えてしまう危険がある。
ある顧客は、火葬場で故人はジャズによる南部式葬儀をするはずであったが、それが 出来なくて口論となった。
また、与えられるサービスは、顧客のニーズや費用に合わせて整えられ、現地の葬儀 慣習や期待に合致するものである必要がある。このように商品は、その土地や宗教にあ わせて計画され、市場に販売される。商品が会社の独自性を持ち、提供する葬儀会社の 伝統と特色に対する誇りが、競争を維持している。 (「フューネラル・サービス誌」91年 7月号より)
●イギリスの葬儀プラン「チョーゼン・ヘリテージ」
事前葬儀プランの一つであるチョーゼン・ヘリテージは、グレート・サウザーングルー プ(1907年に創設された葬儀会社)の一部門が実施している。
セキセー(株)会長・石原正次がコーディネイトを務め、平成6年5月10日から21日 までの欧州視察団の訪問先の1つがチョーゼン・ヘリテージであり、資料はこの視察を 運営した総合ユニコム(株)の「欧州葬儀ビジネス調査視察団」報告書を利用した。そ のなかで、グレートサウザン・グループのピターウイルスさんが『プレニードサービス 商品開発の実際』について講義を行った。
それによると、「チョーゼン・ヘリテージ」のプレニード・サービスは1985年に始めら れたが、その年には国内での知名度はなかったという。4年後の89年にもわずか1000人 という小数であったが、その年に高齢者をケアする「エイジコンサーン」という団体に 紹介されてから急増し、現在では6万6000人の会員がいるという。このチョーゼン・ヘ リテージは、イギリスのプレニード市場の50%のシェアをもち、会員は定年退職者が90 %、平均年令は70歳、そのうち80%が一回払いであるという。
「チョーゼン・ヘリテージ」のパンフレットから、その中身を探っていくと次のような 内容であることがわかる。
誰もが葬儀プランの必要性を知っている。しかしどのように正しいプランを選ぶのか は知らない。多分前もって葬儀を計画すれば、心の平和が与えられることを実感するだ ろう。葬儀準備が希望通りに行われるという保証を持つだろう。また苦しい時に難しい 決定をする心配から、家族と友達を救うことになるだろう。そして、顧客も葬儀社を訪 れることなく、全ての準備をすることが出来るのである。
次に紹介するのは、「チョーゼン・ヘリテージ」のパンフレットにあった商品説明であ る。
この商品は「エージコンサーン」(主な国内の慈善団体)によって推奨されており、こ の商品は、著名な「ベストバイ」(暮らしの手帳のようなもの)に選出された。入会にあ たって年令制限や、健康チェックや質問はなく、契約にあたって入会書に記入してポス トに投函するだけで、葬儀社へ訪問する必要がない。
6万6000人の会員をもつ英国で最も人気があるプランで、一時払い、または容易な分 割払いを選ぶことができる。イングランド全域、ウェールズ地方、中央部、スコットラ ンド、北アイルランドと全国規模にわたって利用でき、加入者が引越しても大丈夫となっ ている。葬儀プランは火葬などあらゆるサービスが含まれている。全ての資金は、信頼 ファンドとともに管理受託者であるバークレー銀行に納められ、希望するならば、いか なる時間でもお金を返済することを保証している。
「利用できる巾広いプランのなかから、あなたはどのようにぴったりのものを選ぶか? あなたがどのプランを選ぶにしても、次の重要な質問の答を知ることは大事です」
尋ねるべき重要な質問
三つのプラン
チョーゼンヘリテージ は、事前支払葬儀プランの 3つの異なるタイプを提供している。それは顧客が希望する葬儀の条件と費用にふさわしい選択を可能にしている。最も 人気があるプランが、「伝統プラン」で、オーク化粧板の棺がついている。遺族のために 法律面と式典についてアドバイスやカウンセリングを行い、火葬料金と生花に対するお 礼状が用意されている。
「ヘリテージ プラン」は、最も高額で、棺は硬材を使用している。そして「シンプルプラン」は基本的な火葬と最小限の儀式を希望する人のためのものである。この3つのプ ランには、火葬料金が含まれている。しかし埋葬を希望する場合には「伝統プラン」か、 「ヘリテージプラン」 から選ばなくてはならない。
●伝統プラン(988ポンド)
「伝統プラン」は、彼らの宗教が何であれ、伝統的葬儀に則って実施したいと希望する人 のために用いられる。火葬か埋葬どちらでも選択できる。葬儀を取り決める際には、社 会的そして法律的な面での丁寧なアドバイスを受けることができる。宗教儀礼など、役 立つ情報とカウンセリングが行われる。死亡診断書や死亡届けの世話が受けられる。国 内での死亡の場合、どこにあっても遺体を齋場まで移送する。葬儀準備と遺体の世話は、 家族の希望どうり行う。また棺は高品質のオーク化粧張り。遺体安置は齋場内のチャペ ルか、他の相応しい場所で行うことができる。教会の儀式と火葬場か共同墓地への移送 に、必要ならば霊柩車とリムジーンが提供される。
担当者は葬儀の前、当日、後のサービスが必要の場合に手伝う。供花に対しては、名 簿と敬意をこめた返礼カードが届けられる。火葬料金は地元の火葬場料金をカバーし、さ らに礼拝料金と火葬証明書(又は埋葬許可証)費用も含まれている。
●ヘリテージプラン(1450ポンド)
「ヘリテージプラン」は、伝統的プランの全ての要素に対応し、さらにいくつかの追加 された特徴と、最高の特別サービスを含んでいる。棺はオークの化粧板の代わりに、硬 材を使用している。必要なら教会に遺体を運ぶ。リムジンは2台供給する。地元の新聞 に死亡告知を掲載する。
●シンプルプラン(825ポンド)
「シンプルプラン」は、火葬と、本質的要素だけを含む簡素な儀式を希望する人のため の経済的なものである。国内での死亡の場合、どこでも遺体を齋場まで移送をする。火 葬前の遺体の世話(遺体安置の設備はコストに含まれていない)。簡単な棺。霊柩車は地 元の火葬場に家族を送り届けるために提供される。(プランには、自宅からの葬儀行列や 教会での儀式の付き添いが含まれていない)。料金は地元の火葬場料金をカバーし、そし て礼拝料金と火葬証明書(又は埋葬許可証)費用も含まれている。
一、火葬サービス料金
チョーゼン・ヘリテージの火葬料金は、推薦された葬儀社によって選択された火葬場 で行われ、費用が支払われる。火葬証明書と教会に支払う料金は、イギリス医学協会と 英国教会の勧めによって行われる。(供花と記念品、教会使用料金のような他の支払いの コストは、その時の状況に応じるため、先立って準備することができない)。埋葬が必要 とされるとき、埋葬費用に対し補助金が支払われる。
二、会員料金
入会費用には、葬儀費用、文書作成、葬儀社紹介費用等が含まれている。
三、紹介する葬儀社
チョーゼン・ヘリテージが推薦する葬儀社は、すべて評判が良く、厳しい規則のある全 国葬儀協会に所属している。現在計画に 490の葬儀社が登録しており、年々この数は増加している。推薦された葬儀社は、必要のときはいつでもサービスをする義務がある。
支払金の安全性
会員が支払った金額は、サービスの時まで 全国葬儀トラストによって保管される。バークレー銀行 は、全国葬儀トラストの管理会社で、全ての投資は彼らによって保管される。 トラストの年次監査が、資金の適切さを検証するため、独立の保険数理部によって行わ れる。
●葬儀準備のアンケート
ギャラップ社では、94年2月に葬儀準備に関する聞き取り調査を行った。それによる と、45歳以上の人の57%は、葬儀のことを事前に相談することをよいことであると回答 した。しかし90%の人が友人や家族と葬儀について協議を行わないと答えている。そし て10%の人は事前に準備し、そのための金を支払うと答えている。
死別体験をした人への調査では、57%の人が故人と葬儀準備について話し合わなかっ たと答えている。しかし50%の人は何らかの指示を受けたと答えている。また男女別で は、49%の女性が自分の葬儀を準備したいと答えているが、男性の60%は何のプランも もっていないと答えた。(フュネラルサービス誌94・5)